別に顔だけ描くのコーナーと分ける必要無いんですが、こういうことやる、的な感じで細分化していくと楽しいので。
……お集まりいただきありがとうございます。
締切、というものが最近ございますな。
間に合わなくても一言告げれば遅れが許されるものもあれば、絶対に破ってはいけないぞ破れば信頼がなくなるぞそうなればこの業界やっていけないぞと、重い重い大仰なものもございます。
私自慢ではございませんが仕事に関してはいたって迅速を心がける性分でして、人の関わるお仕事なり連絡なりは三日残してはならぬとぽんぽんとすまぁとふぉんを鳴らしているのでございます。
なので最近、と前置きしましたのは決してわたくしがその、ずぼらですとかそういったわけではないのですな。
ええ決してそう言った事実はございません、強いて言うなら未だにXのことをTwitterと呼んでしまうのですが、こちらはどちらかというとイーロン・マスクを締め上げたいところであります。
さて、では締切なるものがない時代なんぞなかろうと思われるでしょうが、荒唐無稽に聞こえるますがこれがあったのでございます。
少し100年200年とざっくりしたくくりになってはしまうのですが、なにせ蛇に足があった時代の話でございますからな。
かの大陸の時は戦国、楚の将軍照陽は、魏の国との戦争に勝ち大いに浮かれておりました。これはめでたい登り調子じゃまだまだいけるぞ次は斉の国じゃぁー……
これには斉の国大困り、何にしても勢い付いた敵国なんぞやり合いたいものじゃございません、遊説家の陳軫に声を掛け説得するように伝えます。
「照陽様、この度は魏の国に勝利なされたとのことで誠におめでたいことでございます。しかしその、これから斉をお攻めになると、そう聞きましたもので……」
「うむ。なにせ我が軍もこの勝利にそれはそれは喜び勢い付いておる。飛蚊症でちらつく目のゴミも瑞獣に見えるというものだ」
「一介の遊説家が将軍照陽様に申し上げるは大変恐縮ですが、良かれと思っての考えがのちのち凶事に繋がるということもあります」
「ふむ。なに遊説家というのは物申すが仕事だ、SNSの小賢しいコンサルがごとくエピソードに例えて説得してみよ」
「……はい。職場でお土産にもらう個包装のクッキーとか、もらっても別にその場で食べたくないとポケットに入れてる間に粉々になってて毎回『食事』っていうより『処理』の感じになって逆にげんなりしませんか?」
「……その場で食べれば?」
「口が渇いてることが多いのでなんか気分じゃないなって」
「割れないところにしまえば」
「そのまま忘れて賞味期限のわからんブツが発生したりしますし、『個包装の菓子一つにこっちが気を遣うンすか?』みたいな気持ちになります」
「お前あれはあれで『もらって困らない程度のお土産』のラインなんだぞ……ところで今度北海道に旅行に行くんだけどもらうとしたらなにがいいんだ?」
「タラバガニ」
「厚かましっ」
「はいはいわかりましたよ!使用人たちが酒をめぐった賭け事してて、蛇の絵を先に完成させたやつが勝ちゲームやったら一等賞のやつが『俺はこの蛇の足も描けるもんね』とか調子こいて続き描いてたら『蛇に足ねえだろ』って二着のやつに酒取られたこれすなわち『蛇足』なりって話ですぅー!」
「その一言で済むんならこのパートなんだったんだよ!?」
「だって照陽様って遊説家とかコンサルとかバカにしてる感じで気に食わないんだもん!そうやってざっくり雑にバカにされる枠に入れられると大変なんだぞ、京都人とかネット配信者とか!」
「何の話!?」
さてこの通り、中国の戦国時代紀元前5世紀ごろから蛇の足はないものと扱われておりますが、紀元前5世紀の更なる前、彼らの生まれる前には確かに、蛇に足はあったのでございます。
……そう、アダムとイヴが知恵の身を食べ、楽園から追放される前の話でございます。
現代に隆盛を誇る巨大企業アップルの社名とロゴマークは人類が口にした知恵の実を表しているそうですが、この会社が誇る事業、いわゆる「あいてぃ」というものは楽園追放の直後からすでに存在していたのですな。
あいてぃ……Information Technology 、もちろん皆様が想像しているもの、そのままでございます。パソコンも電気通信も神代の時代より存在しました。
ちなみにすまぁとふぉんだのあいてぃだのとモチャモチャと申しておりますが、わたくし英語は全然いけますからな。これはあいてぃというよりも愛嬌、というものでして……
Don’t give a fuck with me !!!!!
If you insist, Lick my dick ,Baby !!!!!
Huuuuuuuuuuh !!!!!!!!?
……OK?
さて、締切がない時代というものがどういうものかというお話でしたが、いささか蛇足の話といいますか蛇足な話といいますかが長引きました。
アダムとイヴは知恵の実を食べ、自らが裸であることに気がつきました。その罰として彼らは楽園を追放されましたが、これがまんざら罰だけでもございません。
裸であることに気が付いたところで、楽園に裸を隠せるものは葉っぱくらいしかないのですからな、楽園から追放した後も、裸を隠すための服を作れる環境というものを、神はお与えになりました。
神の意向を示す偉大なるイエス・キリストが降臨するのが紀元1年、文書にこそ残されておりませんが神は最初のうち、なかなかに過保護でございました。
加えて、神は自分に似せて人間を作ったため、人間というものは昔はやたらと有能でした。
困ったのが、バベルの塔の建設です。神はいろんなところに住みなさいねと人間を送り出したのですが、彼らは塔を作りました。現代でいうビルと同じですな。地に送り出したのに天に届くまで高く作ろうとしているのも問題ですし、高層階の建物が増えると同じ場所にいっぱい人が住めてしまいます。
これでは開拓を是とするFrontier spirit は育ちません。
まだ実現不可能だったら放っておいても良かったのですが、「あ、これ割とできちゃうな」と思った神はテコ入れを発動。
それまで全人類で通じていた言葉が別れ、『言語』というものが生まれましたが、これが良くなかった。
あいてぃの話を思い出してください。言語が生まれたのです、「プログラミング言語」も。
神ほど万能ではありませんが、神に似せて作られただけあって人間は有能も有能。納期なんてあってないようなものなのです。やろうと思えば大体実現するから。
そう、人々には「守るべき締切」なんてものはなかったのです。計画性なんて大事にしなくても全部スケジュール通りになったから。
技術の発展は凄まじい勢いで進みましたし、神様はこれには喜びました。
食事管理アプリもできましたし歴史上の偉人擬人化スマホゲーもできました。偉人がまだ出揃っていなかったから『なんか知らんけど金持ってるらしい父方の親戚』みたいなのばっかでしたが。
ソフト面だけではなくハード面も。ありふれた素材から有用な生体パーツを作り、義手や義足、義眼なども次々と開発されました。
そろそろ神は嫌な予感がしてきました。このままでは立ち上がってしまいます。知恵持つ機械人類を作ろうとする一大プロジェクトが。
なんだかんだで神は追放されたアダムとイヴにはそこまで怒っていませんでした。罪なき者に知恵を与えるというのは、未成年に教育を受ける機会を与えないみたいなカテゴリの罪でした。どっちかというと保護者側の罪になります。だからこそ配慮も兼ねて楽園を追放しましたが、彼らに知恵の実を与えた蛇にこそ、厳罰を下し足を没収しました。
このまま放っておいたらいずれ人間は新たな『知恵を与えられた者』を作り出してしまいます。それは全人類から足を奪うに値する重罪です。
とはいえ、そそのかす悪意のあった蛇はともかく、今のところ人類は頑張っているだけです。今から罰する気にはなれませんでした。
なるべく神も直接的に干渉したくなかったのですが、ネグレクト相当の罪を分かっていて放置する気にはなれません。
そこで、最初は実行能力にちょっとデバフを掛けてみましたが、完成するまでが長引いただけで、人間たちも大して気にしませんでした。だって手を動かしていればどうにかなるのだから、「余計に」焦る必要はありません。
そこで、神は色々どうかと思いつつ、人間に新たな性質を、逆に足してみました。……「好き好んでいらんことする」性質を。
結果はそれはそれはもう大騒ぎ。どうでもいいことで隣人の足を引っ張り、手を動かせば済むことをずっと愚痴り、良かれと思って作業の動線を確認もしないまま変えまくってぐちゃぐちゃにする。
焦らなくてもどうにかなった時代は全て終わり、しょうもないミスを片っ端から排除しなければ最終デッドラインに間に合わない。そもそも何も解決しないまま10年も同じ失敗をループし続けて「まだ途中だから。いつかはどうにかなるから。」と失敗したという意識すら得られない、そんな仕事を納めるために人間の世界には「締切」が生まれたのです。
その結果、人間はもう、いやほんっとにもうどうしようもなく醜くなりました。いつしか紀元前のIT文化は形も残らないほどに崩れ去りました。
人は足を奪われることはありませんでしたが、蛇足を与えられた人間の社会でエンジニアリング分野が再興した頃、労働力を意味する「○人足」は、今も基本足りていないのだといいます。
「蛇足」というお話でございました。